Baked Fish
月乃助


泳ぎだす
 香にオーブンから ときはなたれ
      あたたかな うれしさに
  まるで熱のある魚のように、
いいえ ちがう ちがう、
   喜び
    だからこそ
 うかれ キッチンにあふれでる
きみは気づかずに あたしはおもしろくて
 天井のすみに うち当たっては 舞いもどり
    こんがりと 軽くなった幸せに
  透明な笑いをかえし いつしか
 香はあつまり 大きないっぴきの魚になっている から
あたしは きみの手をにぎり
   魚の背にまたがり 窓から抜け出した
    流れの楽しみの
 ほんわりと
芝生の上から
 空にあふれ 林檎の枝のあいだを
すべり抜けた 昼下がり
 あっという間に、幸せは屋根の端 白い雲の中に
  姿を消していった 
   きみとあたしと魚 が
  泳ぎ去った 夏
青空の果て 



自由詩 Baked Fish Copyright 月乃助 2009-09-01 00:36:23
notebook Home