伊月りさ

きみの言葉
岸辺の水草
抱き合った夜のまるい小石
わたしの言葉
艶やかな泥
探り合った分だけかさんだ枯れ草

ひとつずつ拾い集めて
一年間を歩いていく
ほら、
晴れだというのに布団にもぐり、肌を楽しんだ贅沢が
無数の小枝、たっぷりの土壌に散っている

積み上げて
きびすを返して遠い南へ
きっと腐蝕過程のやわらかな枝が
疑心の数だけ落ちているだろう
痩せた思い出は針金になり
日陰に刺さっているだろう

それでもわたしは巣をつくる
たとえ太陽と契約しても
焼け死ぬ前に帰れる場所
きみを守る
掌のような寝所

恩を吸って育っているので
この大樹は頑丈だけれど
この大樹は寛容だから
蜜は、寄せつけすぎるのです
胎内にはなれない

なので、わたしは巣をつくる
不揃いの卵も満遍なく孵る場所
きみが美しいと感じるものが
命となって飛び立っていく場所

抱擁の小石、
後ろめたい枝、
わたしの言葉で塗り固めると夕暮れがくる
そして夏は過ぎ
薬指には指輪の日焼けができていた

そうしてやがて巣になりたい
ひとつずつを取りこぼさずに
拾い集めてわたしにしたい
そして車座の卵の中心
陽に温まる内側の
わたしたちをぬくめていたい
裸の抱擁を守っていたい

そう、
守れるのだと思っているわたし


自由詩Copyright 伊月りさ 2009-08-31 02:50:36
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