高原牧場
葉leaf

街は色彩と四角形が多い
色と形を捨てた僕は
自動車の中から窓越しに
後ろへと緊張していく風景に
様々な情緒の斑点を投げていった

山道に入ると木々が道路をにらみつける
おびえた道路は身をくねらせる
山の中だけ夕方になったかのように
光は死にかけて大気は血の気を増す
友人の運転が装飾的になり
僕は遠心力で少し太った

上ったり下ったり
右へ左へと曲がり
緑色の影が
投げやりな秩序を膨大に
考えては並べ
苦しんでは浮かしていく中で
僕の中の蒸気は膨れて溢れてしまいそうだ

視界が開けて
砂漠のような牧場が広がる
僕たちは車から降り
数年ぶりに大地を踏むように
足元の確かさに体全体が貫かれた
ベンチに座り
かすんだ街を見下ろす
作られたばかりのような紙みたいな街を
今なら簡単に破けると思った

高原の冷気は僕と空とを淋しくつなぐ
馬に触れてその無表情におびえる
馬の深淵が悲劇の恐ろしさの環になっている
「おとなしい馬だね」
僕はそんな嘘の外側を
牧舎の四角による慰めで囲っていこうとした



自由詩 高原牧場 Copyright 葉leaf 2009-08-28 11:01:24
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