そこにアデニンがいたのなら。
ジャイコ

墨色に溶かされたあなたの体が、
ここでは美化されて壁に飾ってありました。

両の手首には楔が三本ずつ打ち込まれ、
鮮血に染まった空が少しだけ泣いているように思えます。

細長く、節のある体からは既に全部が失われていて。
君はただ柔らかく泣くしかできない現実から、
半分だけ消えようとしているようでした。

眼鏡のレンズがくもり始めたので私は、
そろそろ髪を結わなくてはいけません。
それはきっと夕日の落ちる先へ進むための道しるべ。
いいえ、ただの鍵なのでしょうか。

どちらにせよ、予兆は大切に扱うべきだと
祖母からきつく言われていましたもので、
そろそろ君の足を切り取るべきなのでしょうね。

苦悶する音が、私の胃袋の奥底へと落ちる日に。
あたらしいあなたは、そこできっと生え揃う。

そんな気がしています。


自由詩 そこにアデニンがいたのなら。 Copyright ジャイコ 2009-08-26 00:02:40
notebook Home 戻る