四行詩四態 <2>
nonya


「見」


見ているのに見えていない

僕の眼はたいてい当てにならない

1秒先の出口も1cm後ろの奈落さえ

感情の濃霧に包まれたら何も見えない




「嗅」


疲れた鞄の匂いはぶきっちょな父の照れ笑い

蒸れた畳の匂いはしょっぱい母の小言

濡れた傘の匂いはちっちゃな祖母の背中

萎れた花の匂いはうっすらと誰かの横顔




「聞」


19Hzの君の溜息は聞こえない

21KHzの君の叫びは聞こえない

鼓膜を震わせる生温い言霊は

うずまき管を手なずけ大脳を居眠りさせる




「触」


触れた夏は掌が忘れない

交わした言葉が色褪せても

掌紋の丘に一度咲いた花は

決して枯れることはない





自由詩 四行詩四態 <2> Copyright nonya 2009-08-21 07:25:20
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