怠けた速度
こうや

リビングの床に自分の影がまるごと抜き取られて映っている
薄暗がりの公園にぽつんと突っ立っているようだ
半径2メートルの背景が迫る

真新しい洗面所は
修学旅行の時みたく扱いにくく
間接照明と蛍光灯
どちらがより如実に自分を照らすか考える


歯を食いしばって海に潜った
浮力に逆らえない体は口を開いた水面に翻り
空気に触れた肌は怠けた速度で焦げた

青空にも海底にも手は届かず
地にも足は着くことはなかった

蒸気機関車の音と潮騒と蝉の叫び声を思い起こし
そうやって夏を連想することで体を興奮させようと躍起になった


自由詩 怠けた速度 Copyright こうや 2009-08-19 22:08:41
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