「 なのにまだなまぐさい。 」
PULL.
あてもなく書き滴ることばはいつもあなた宛てなのに届かない。
産んだ憶えもないおとこずっとおっぱいに吸いついて離れない夜。
空き家にしのび込むようにあたしの中にすべり込んでくるおとこ。
ホテルのキーを差し込むみたいにおまんこにおちんちんを刺すおとこ。
びりびりとストッキングを破かれながら痺れるように感じても。
ボタンを掛け違えるような手つきでおまんこの中まさぐるおとこ。
あなたの前で脱ぐたびにいつもあなたに見えない重荷を着てる。
あなたの上に乗っても重力以上の重みは落とさない憂鬱。
あれから何度も恋して愛してるなのにまだなまぐさい恋もある。
オオカミ少年みたいに「アイシテル。」と動く唇ピアスで留める。
引力みたいに引き寄せられてかつんと当たる歯までが愛おしい。
電池が二本あったなら直列でなく並列に列べるそんな彼。
漂白剤に犯されてしみしみと死んでゆく彼の不適切。
彼のポケットから転げ落ちたたまごも産むように踏んでみる悲劇。
脚のあいだの水路をとおり流れてゆくものの顔をまだ知らない。
了。