送り火
山崎 風雅


 今にも壊れそうな精神は
 今だ使ってる98のパソコンのようですぐに不具合を起こす

 助けてくれとも、言えず、かと言って自棄にもなれず
 小さな声で くそったれと呟く

 3年たったら、もう辞めました
 言うのが見え見えの人達と交わすやり取り、面倒で
 どうせ、文学論して、難しい言葉使うんでしょ、みたいな青いのは大嫌い
 
 
 きみの病気はよくならないけれど
 突然の電話
 「大文字、送り火見よか」

 覚えた男結びで、ゆかた来て、バイクにまたがり、ぶっ飛ばす
 やんちゃな兄ちゃん、悪いけど、今日は急いどるんや、母ちゃんに相手してもらえ
 じゃますんな

 化粧して、ゆかた着た君、凛として
 思わず、からかう
 どこの部屋の力士ですか?
 君、答える
 高砂部屋の十両です と

 太子道の交差点、警官が笛を鳴らすまでの青信号、横断歩道からビルの間に見えた 大の字

 カラカラ鳴る下駄、下駄なるカラカラと

 夏も終わりと、ゆかたの胸元、漂うか色香

 明日の診察、お父さんと行くねん

 あ、そか

 お父さん、一緒にビール飲みたい言うてたけど、みきひろバイクやろ 危ないし
 
 飲みたかったな

 
 円町駅まで着た時は
 人もまばらで
 

 
 壊れそうなほど、もろい思い出だけど
 少女のような君を見つけた送り火の夜

 
 

 
 
 


自由詩 送り火 Copyright 山崎 風雅 2009-08-18 01:20:11
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