囚人ノ絵 
服部 剛

旅人は路地裏に入り 
とあるギャラリーの戸を開いた 

暗がりの壁に映し出された 
ノートの縦線という「牢獄」の 
内側に立つ 
ひとりの囚人の絵が 
何かを語りかけていた 

椅子に座り 
(囚人への手紙)を書いている時 
ギャラリーに住む青年が入って来た 


「 終わりの無い空間を僕は 
  今も EXIT という
  いくつもの出口を 
  次から次へと、走り抜けています 」 


旅人は椅子から、腰を上げる。 


「 世界というのは、牢獄です 
  わたし自身も、牢獄です 
  このギャラリーの密室も 
  仮想現実の、牢獄です   」 


青年はうなずいてから、部屋を出た。 


壁に映し出された牢獄の 
内側に立つ 
独りの囚人 
いつのまに 
全身、ひかりを帯びていた 






       


自由詩 囚人ノ絵  Copyright 服部 剛 2009-08-17 21:39:32
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