火葬がいい
あおば



夢の中で土左衛門を土葬にした。

土葬にしたのは火葬にする費用がないからで
金が有れば火葬にする。

火葬にすれば墓が湿らなくて良いし
燐が燃えたりしないので気持ちが悪いこともない。

仏教徒だから火葬がいい
火葬がいいと思いながら一所懸命働いて
火葬の費用を貯め込んで
それが適った日に事切れる。
それが一番の幸せと思うので
土葬にされた人は肩身が狭い。
土葬にされた
土葬にされたとわめき散らしたいのだが
声が出ないから
黙って腐っていくばかり。

土葬では、
地に還るのは時間が掛かる。

超特急でガスになり、大気の循環に加わって、あっという間に地球を巡る、火葬が人気があるのは当然のことで
巧くすればその日のうちに好きな人の身体の中にも潜り込むことが出来て
巧くすれば骨となり
肉となり
血となって
頭の中にも入り込み
楽しい思いに耽ることもできる。

火葬がいい
火葬がいい
と言いながら
土葬にされた身寄りのない彼の身体は拠り所が無くて、土饅頭の中で寂しそうに骨になる。

すっかり腐って土になる前に、掘り起こしに行くのは、土葬にすると決定した僕の務めなのだ。




自由詩 火葬がいい Copyright あおば 2004-09-09 00:32:31
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