夜明け前
さき

もうすぐ
もうすぐだねって
やってくる夜明けを
あの時は
あんなに胸をときめかせていたのに
今はベッドで寝転がったまま
リモコンがあればいいのに
なんて
考えるようになってしまった


同じ日々の繰り返しの果てが
そんなにいい匂いがしないこと
環状線を三周したあたりで
私は悟ってしまったのだ
まだ
予定の3分の1ぐらいの行程で


人より欲深いゆえに
棄権はしないし
人より浅はかなゆえに
思いつきをを口に出し
どうしようもない女
とか誰かに言わせてみる
「この靴が合わなくて足が痛いから
 迎えに来てよ」
とか
「この口紅でキスしよう」
とか
「私に私のままでいいって
 嘘でもいいから言って
 それから愛してちょうだい」
とかね


単純な毎日と
お手軽な日々を
ひらひらと飛び続けている
右肩とこの胸の蝶々の羽
諸行無常の響きと
止まない太陽の歌を聞いて
きっと
もうすぐ剥げ落ちる


最近よく思うのが
きっと
あの夜
知らない男に
自分の見えないところにつけられた
私のチャックを
きっと
気づかないうちに下ろされて
それまで一生懸命
取捨選択してきた
パステルカラーを
抜かれて
代わりに
アイツの都合のいいものを
詰め込まれたんだよ
ということ


吐くまで飲む酒
とか
万が一の時のためのアレ
とか
綺麗に見えない涙
とかね


基本的に悪いのは
私じゃないからって
惚けるたびに
嗤われる


猫だって
何年か生きたら
お化けになるんだって


私だって
もうこんなに生きたから
忌み嫌われても
仕方ないって
思いきれないのが
残された
愛しいけれど
めんどくさすぎる
いたらなさ


最近は
切れた期限を
途方もなく
虚ろな心で
撫でまわす


みんな
数えないことに
したらいいのに


って







自由詩 夜明け前 Copyright さき 2009-08-15 11:37:28
notebook Home 戻る