海
伊月りさ
きみにとって
あの女は
海でしたか
アラビア数字の布団のなかで
きみは
真水に少し飽きたのか
熱いからこそ膚に滲みる
濃度に泳いで
それ以上に塩辛い汗をふんだんに流して喘いでいたのか
無限の兌換性をもつ記号に
安心しきっているようだが
わたしはそれが指すものが
あの女であると言い切れる
きみにとって
わたしがどんなに
失えない海であろうとも
きみにとって
あの女は
ひとつの海なのでしょう
きみにとって
あの女は
海でしたか
(創書日和・葉月「海」)
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創書日和。