伊月りさ

きみにとって
あの女は
海でしたか

アラビア数字の布団のなかで
きみは
真水に少し飽きたのか
熱いからこそはだえに滲みる
濃度に泳いで
それ以上に塩辛い汗をふんだんに流して喘いでいたのか

無限の兌換性をもつ記号に
安心しきっているようだが
わたしはそれが指すものが
あの女であると言い切れる

きみにとって
わたしがどんなに
失えない海であろうとも

きみにとって
あの女は
ひとつの海なのでしょう

きみにとって
あの女は
海でしたか




(創書日和・葉月「海」)


自由詩Copyright 伊月りさ 2009-08-15 01:35:38
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創書日和。