騒々の庭
山中 烏流





首より上を
他人のそれと
挿げ替えたまま

歩いていく
そんな人々を
横目で追いながら
私は
ただ、その姿を
見送っている





少女Aは
単色の降る
狭い浴室の中で
風呂桶を
掻き回し続けているから
いつまでも
帰路を辿れずに
途方に暮れている

少年Aは
様々な言葉を並べた
ショーケースに
見とれてしまっているから
いつまでも
「言葉」を知れないままで
そこに
立ちすくんでいる





  の行く先を
案じた人がいた

けれども
その  たちは
私の顔をしていないし
人々に
私の言葉を
届けるような術も
持ってはいないから

私は、いずれ
  になってしまう





昨日
私と同じ顔をした人が
騒々しさの中で
私と
同じようなことを言っては
楽しそうに
会話を弾ませて
笑い合っていたらしい

もしもそのことに
私以外の誰もが
気付かなかったのならば
きっと
私はもとより
  ですら
もう、そこに
存在はしていないのだ





私を呼んだ声ですら

既に
形を持たないというのなら、










自由詩 騒々の庭 Copyright 山中 烏流 2009-08-12 04:17:59
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