inocent
ひめり

ちぐはぐだらけな泥沼を掬い上げて
今にもこぼれだす彼女の涙も、
あたしにはただひたすらに幻のように見える。

そろそろ 視聴覚の衰え。
今にも泣きだしそうなあたしを
見てみぬふりした黒猫を
あたしはじっと見つめます。

それは魂が退廃した紛い物のようだったから。


繰り返した虚言を、いちいち拾って
抱き締められた腕の隙間に汚れた涙を落としてしまった。

いっそ このまま窒息して、
二酸化炭素を閉じ込めたままで
あたしの身体に熱など
余りにもきつすぎる


ピアノの音が散々している指は自ずと働き続けて、
まるで憂さ晴らしのようね。

相当朝が恐ろしい


自由詩 inocent Copyright ひめり 2009-08-09 16:57:51
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