マナウス
……とある蛙


ー少年はマナウスを夢見ていた
 川の対岸に沈む夕日を
 アマゾンの熱い空気圧を
 しかし、

川の向こうの水平線に
大きな夕日が沈む時
マナウスの熱い夜が始まり、
船が夜の川をゆっくり滑り落ちる。

獣の咆哮
鳥の声
ネットリとした熱帯の空気圧が
少年の眠りを妨げる。

得たいの知れない神が
熱帯の空気圧に潜んで
そっと少年の息を止めようと
陰謀を企んでいるのか。

少年は少年で暗がりを
じっと睨んで
熱帯の空気を自分の身体に
そっと取り込もうともがき始めた。

しかし、熱帯の闇は
少年の息のする限り
あるいは色のない原色の羽根の鳥の鳴き声を真似
あるいは大きさのない小動物の咆哮を真似
少年の皮膚から勇気を引き剥がそうとする。

少年は叫んだ。
闇に向かって叫んだ。
誰も助けてくれないことなど
とうの昔に知っていることを知らせるため、
独りだ
でも僕は負けない

そこから多分少年の
朝が始まった。
そして、川の向こう側の水平線から
夜を息苦しくしていた
焼けただれた石のような朝日が
昇ってきた。
そこからさらに暑い少年の1日が始まった。
そこから得体の知れない街の生活が始まった。


自由詩 マナウス Copyright ……とある蛙 2009-08-08 13:49:47
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