小雨綺談
小川 葉

 
 
朝から晩まで働く
とはいうけれど
この頃は
朝から朝まで
働くことも多くなり
今日などは
昨日の朝から翌深夜まで働いて
今こうして
わずかばかりの自分の時間を
ひとり過ごしている

むかしとても暇な
職場に勤めていたことがあって
自分の時間を持てあまし過ぎて
結果ろくなことにはならなかったという
経緯がわたしにはある

実績も人脈も
すべてうしない
そうして今の職場にいる
この現実が過酷だと思えば
たしかに過酷であるのだ

休みなど年に数えるほどしかない
息子を見るたびに
成長してるのがわかる
妻もまた
そこからはみだしていくような
変化を時々帰ったとき
ふと家で発見することがある

むかしの人脈の中で
いっしょに仕事しようと誘ってくれた
あの方に電話する
時には心細くなりすぎて
後悔にかたちを変える
気持ちだけが消せなくて
無意識に電話してしまうことがある

けれど電話に出ない
やはりあの頃と今とは状況が
すっかり違ってるんだろう
あれから五年
息子も五歳になっている

出会いとチャンスというものは
何も仕事だけではない
たとえそれらを逃しても
かわいくてしかたがない
家族の暮らしがあるのだから
僕は何度でも
同じ朝を迎えたい
 
 


自由詩 小雨綺談 Copyright 小川 葉 2009-08-05 04:53:46
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