八月
ミツバチ

彼女は言う
ほらご覧よ
指差した先は果てしなく真っ青な空で
でも時々何処かが赤く染まるのよ
そう呟いては俯く
きっとあの重そうな銀色の機体は
見た目に反して軽やかで
この空をまるで自分のものの様に飛びまわる
そしてまたどこかに鉛の塊を落とすのだろうな

彼女が泣き出す
忘れてしまったの?
惨劇を知らない僕は
夢の中の出来事のようで
肌に感じる事が出来ずに俯いたまま流れてゆく

今年も忘れてはいけない夏が来る
そういえば彼女の名前を聞いていない
真っ青な空の下
全ての想いを吸い込んだような
美しい紅い花を咲かせ
あの出来事を伝えようと
懸命に生きて居たのに


自由詩 八月 Copyright ミツバチ 2009-07-29 12:15:32
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