ファクシミリ1_金糸雀
梶谷あや子


帰ったら
ご飯を食べようね
バス停前のあの本屋
きっとこの頃は
思い過ごしているのだろう

傘の下のせまい

湿った毛色がとろりと風邪をひく
濃いすみれのようなのは
浮ついた午前のまっくらさ

たゆんだ車窓が
縮こまって
そこを君の幽霊がうずくまったり
走ったりして
とても青い
青くて弱い肌をしてるんだ

苦手な数式
解いてみせて
何も聞こえなくとも
幸せでとろけるかと思うのに

空をもう随分見ていない





自由詩 ファクシミリ1_金糸雀 Copyright 梶谷あや子 2009-07-26 15:11:46
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