首筋
たもつ

 
 
タンポポを一輪だけ摘む
何も知らない貨物列車とすれ違う
水のように冷たいものを売っている所はありませんか
と、男の人に聞かれ
あっち、と指差す
あっち、に何があるのか行ったことはないけれど
もしかしたら親切な人が
必要なものを売ってくれるかもしれなかった
会わせたい人がいるの、
母は出掛けに言った
これから何度寝て
何度目が覚めても
決して会えない人たちもいるというのに
人気の無い瓦礫らだけのところで
タンポポの火葬をする
時おり吹く風と茎などに残る水分とで
なかなか火はつかないけれど
根気よく続ける
タンポポの火葬なんて
単なる思いつきだった
ただ、母も、母が会わせたい人も、
もう会えない人たちも、さっきの男の人も、
そして自分も、
嘘をつくときは
どうして申し訳なさそうな顔をするのだろう
気がつくといつもの癖で
首筋のあたりを掻きむしっている
 
 
 


自由詩 首筋 Copyright たもつ 2009-07-21 21:30:28
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