寅さん、語る。 
服部 剛

きみは東京という街にやってきて 
やがてセンスを身につけるだろう 

流行りの服を身に纏い 
流行りの帽子をかぶり 
そして 
流行りの店で可愛娘ちゃんと食事する 

しかしだな 
センスって一体なんだ? 
夏に手にして仰ぐアレか? 

東京であれ故郷であれ 
自らの花を一輪 
自分という体の花瓶の上に 
にこりと顔を咲かせるのが 
人間のせんすってもんじゃないか? 

( お兄ちゃん 
  そんなこと言ってるから 
  お嫁さんが来ないのよ・・・! ) 

嗚呼、妹さくらの囁く声はどこからか 
風に乗って 
今にも聞こえてきそうだな 

どんなに流行りの服を着ようとも 
てめぇ自身という服だけは脱げねぇ 
おいらはフーテン寅次郎 





自由詩 寅さん、語る。  Copyright 服部 剛 2009-07-21 21:08:51
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