海とノスタルジア
照留 セレン
東の山の泉から
湧き出た水が川となり
私の足を洗いながら通り過ぎていく
手を伸ばし足を伸ばして
はね上げた雫が
遠い記憶の影を照らした
私は鰭をもっていた
水の中で息をしていた
気付いたら 遠くなった
海
川に浮かんで
漂いながら
このまま降りて行きたい
優しく満ちた汐の中へ
幾つもの山を越え
いつの間にここまで上ってきたのか
鰓をふさぎ
鰭を手足に変え
両の目は前を向いて
肺で呼吸している
水から上がり
体の重さに座り込んだ
蒼い山に囲まれて
陸の上で息をしている
私はもう帰れない