海とノスタルジア
照留 セレン

東の山の泉から
湧き出た水が川となり
私の足を洗いながら通り過ぎていく

手を伸ばし足を伸ばして
はね上げた雫が
遠い記憶の影を照らした

私は鰭をもっていた
水の中で息をしていた
気付いたら 遠くなった


川に浮かんで
漂いながら
このまま降りて行きたい
優しく満ちた汐の中へ

幾つもの山を越え
いつの間にここまで上ってきたのか
鰓をふさぎ
鰭を手足に変え
両の目は前を向いて
肺で呼吸している

水から上がり
体の重さに座り込んだ
蒼い山に囲まれて
陸の上で息をしている
私はもう帰れない


自由詩 海とノスタルジア Copyright 照留 セレン 2009-07-16 08:50:04
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