喫茶店で
番田
思い出の一つすらどこにもないからかもしれない
換気すらしていないうえに
めくってみるその単行本は汚く
雑誌は忘れ去られた時代のものだろう
どこかにむけてとにかく歩いていこうと思った
夢のどこかに今いるのだろうと
通り抜けながら来たばかりの道をずかずかと
渋谷の田舎の人みたいだったかもしれない
ため息をつきながら近くの喫茶店のドアを開く
アイスコーヒーで誰に会えるのか
苦みに落ちていくのだけれど煙草の煙がいっぱいだ
腰を下ろそうということもないままに
答えをつかめないまま注文する
苦悩にひかる照明にじっと待ち受けている
見つめ続けるようにしているせいだろう
話す相手がこの目にしっかりしていない