喫茶店で
番田 

思い出の一つすらどこにもないからかもしれない
換気すらしていないうえに
めくってみるその単行本は汚く
雑誌は忘れ去られた時代のものだろう

どこかにむけてとにかく歩いていこうと思った

夢のどこかに今いるのだろうと
通り抜けながら来たばかりの道をずかずかと
渋谷の田舎の人みたいだったかもしれない

ため息をつきながら近くの喫茶店のドアを開く

アイスコーヒーで誰に会えるのか
苦みに落ちていくのだけれど煙草の煙がいっぱいだ
腰を下ろそうということもないままに

答えをつかめないまま注文する

苦悩にひかる照明にじっと待ち受けている
見つめ続けるようにしているせいだろう
話す相手がこの目にしっかりしていない


自由詩 喫茶店で Copyright 番田  2009-07-16 02:55:45
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