独白日記 〜今日の直筆ノートより〜
服部 剛


 少し前迄、初老の両親とこの店で食事をしていた。メニューを見る時に、視力の落ちた目を顰(しか)める父と母の前に座り、相変わらずふらふらと生きている自分を申し訳なく思う気持を抑えながら、何気ない会話を交わしていた。 

 目の前にいる両親が、約40年前に出逢わなかったら、僕はこの世にいなかったと思うと不思議な気もするが、僕のような出来損ないの人間が、いてもいいのだろうか・・・?という心情に覆われそうな時もある。だが、目の前に座っている人の良い平凡な両親に、口が曲がってもそんな事は言えないのだ。 

 両親と3人で外食すると、決まって半年前に亡くなった祖母の話になる。何度も口にする事だが、30年以上共に暮らした人がいないという事を、今も不思議に感じている。祖母の部屋に置かれた遺影の、穏やかに微笑む顔を見る時、生身の人間として生きた祖母の魂は、火葬場で焼かれた煙と共に(聖なる世界)へ吸い込まれて逝ったような気がしている。 

 半年前に、祖母が地上から姿を消したように、この地上にいる全てのかけがえのない人々はいつか、一人、また一人・・・と消えてゆき、夜空に一つ、また一つ・・・と瞬く星になってゆくのであろう。行き着く所、人間にとって最後に残るものは、想い出なのかもしれないと思う時、僕は祈る。願わくば、今日という日に、良き想い出を・・・と。

 僕の胸の内に広がる夜空には今も、一つの星が震えながら、瞬いている。こんな時は、思春期の頃に始まったあの問いを、改めて僕は、繰り返す。(一体何故、僕は地上に生まれて来たのであろう・・・?) 

 僕は、詩友の君と、心から本音の話がしたい。そして、胸の内に、瞬く星を宿す人々とBensCafeの詩の夜に集い、日々の歓びも哀しみも分け合う時を、共に過ごしたい・・・それは僕の、心の底からの、願いです。 








散文(批評随筆小説等) 独白日記 〜今日の直筆ノートより〜 Copyright 服部 剛 2009-07-15 22:51:58
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