ブルーノートにて
チャオ

そういえば、こないだ初めてブルーノート東京に行ってきた。
僕は24歳のフリーターだから、あんなとこ場違いもいいところだ。下北沢シェルターで跳ねてればいい位なのに。
それでも、すごく好きなピアノトリオが来るから、なけなしの財産はたいていってきた。

中に入ったら、ハイクラスの香りがした。すごく上品なつくりでびっくり!
三人で予約して、中に通されて、ステージが近いことにびっくりした。そのうえ、お客さんもお金持ちそうで。

テーブルに座ると、メニューが出された、けど、二人はカフェラテ、僕はビール。明らかにここでご飯食べるきなしのオーダーを通した。

待つこと30分。待ち望んだピアノトリオがやってきた。

右側から、変態的な轟音ドラムが変拍子のリズムを作り出すと、左側から暴力的で、かつ美しい旋律を奏でるピアノが入る。そして、二つの交わることのなかった個性を、控えめかつ、主張的なベースが中央から、音楽を作り上げた。

気がつけば、ドラムへ、気がつけば、ピアノへ、気がつけばベースへ。僕の耳は全体像を捕らえながらも、それらがあまりにもスケールが大きいことを主張するように、けっして、すべてを包括できずにいた。

演奏する三人は、互いに変化する音を、確かめることもないようにそれぞれの音を投げ出していく。それが僕の耳下へ届くと、音楽出来上がって、言葉も、景色も、感触も、すべてを暴力的に払拭しようとし、かつ、ありのままのすべてをたたえているようだった。

音楽は偉大だ。僕には何も許されなかったあの空間で、僕は、僕の将来を夢見、そして、何かを描いた。

演奏が終わると、僕らは青山の町へ出た。やっぱり大人の世界だ。僕らは、渋谷まで、飲み屋を探しに歩いた。

何から何まで、完璧に負けた瞬間だった。
僕らは、飲み屋に行き、ビール二杯と、シャンディーガフを一杯注文した。
三人の飲み物がそろうと僕らは乾杯した。

心のそこで僕は、誰に言えることもない敗北感にひっそりと乾杯した。そして、悔しいことに「完敗」とかかっていることに気がついて、苦笑した。

最後まで、僕は負け通しだったらしい。


散文(批評随筆小説等) ブルーノートにて Copyright チャオ 2004-09-05 22:05:44
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