へびいちご
ミズタマ

どんなに悲しく思っても
どんなに愛しく思っても
あのひとの歩き方も、もう
思い出せない
思い出さない

遠くのほうで鳩が鳴いて
自転車の下にへびいちごを見つけた

あのひとが私にくれた
指輪の宝石の色に
よく似ているへびいちご
愛らしく私の指で光っていた
よく似ているへびいちご

その赤い実を手にとって
日光にかざすと
溶けてしまいそうに光り
やがて私は
あのひとの名前も、もう

思い出せない

思い出さない。


自由詩 へびいちご Copyright ミズタマ 2004-09-05 21:44:00
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