夢精卵。
末吉剛士 (from send-ence)

「一生のお願いです。

今日だけ私を癒してください。」

 

12月のある寒い夜のことだった。

別れて半年と少し。

ちらほらと連絡をとっていたものの、

元カノからのひさしぶりのメールが

こんな内容だったことに少し驚いた。

 

その晩、ボクはカノジョを抱いた。

 

2回の愛のないSEX。

 

無気力に腰を振る自分。

声もあげない彼女。

 

まるで、人形同士が抱き合っているような

とても冷たく、とても無機質なSEX。

 

でも、悲しいもので、お互いを知り尽くした僕らの体は

心と無関係なところで、勝手に反応してしまう。

それはそれで気持ちがよいものであり。

カノジョは濡れ、ボクは射精した。

 

出たものは、限りなく黒に近い

白濁色のボクのエゴだった。

 

せめてカノジョに届かないように

0.1mmの紫色のフィルターに

何もかも遮断してほしかった。

 

悪いことに。

ボクの心を見透かしたように。

無気力と無感動だけは透過してしまったようで。

 

カノジョは悲しげに、少し微笑んだ。

 

こんなことなら

全てを届けたほうがよかったね。

 

いや、何も届けないほうがよかったのかな。

 

最後にカノジョにそっとキスをした。

塩味にきづく。

その夜、涙ではじめて体液を交換した。

 

------------------------------------------------------------------------

夢精卵。  正直、あなたを想うと今でも胸が痛いんだ。


自由詩 夢精卵。 Copyright 末吉剛士 (from send-ence) 2004-09-05 13:47:28
notebook Home 戻る  過去 未来