巣箱
エズミ

昼ごはんのあと
かたづけがひとまず済んだ
うす明かるい台所。
水切りかごの中には茶碗や箸や
小鉢や玉杓子なんかが、
伏せられて
おとなしく乾くのを待っている。
毎日なにかしら、人の手が触れてきた
鍋や薬缶やステンレスボウル
フライ返しや泡だて器は
整然というほどよそよそしくはなく
雑然というほど無頓着ではなく
散漫なまとまりで重なっている。
丁寧というほど慎重ではないが
まあ、中庸の扱いで時間に晒して
鈍い痕がついている。
胡椒や粉山椒や、ナツメグなんかの
ありふれた無節操にしたって、
店先でみつけたときは
あまりにも溌剌と並んでいるので
なんだか小恥ずかしかったが
今ではすっかりなじんだ色だ。
いつのまにか集まっただけなのに
うちとけて、くつろいだ人たちと
一緒にいるような、淡い放心。
さて、食器をしまおう。


自由詩 巣箱 Copyright エズミ 2004-09-05 00:31:59
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