空は人のかたちに似ていく
石田 圭太

 
 
 
+8月19日

背が高くていつも
自信がなさそうにしてる
優しい普通の女の子
美しい横顔で
声を出すと歌になる
大切なことは
いつも最後に
こぼしていった



+ボクサーと幽霊

恐ろしい夜には
拳を固く
シャドーボクシングをする
絶対に誰にも負けない
あの時
切り裂いたものは
確かに風ではなかった



+底のほう

もう戻れない教室に
手や足を書き足して
明日来てもらう
水か魚かも
わからなくなった黒板に



+夢占い

永遠に
空のようなものから
落ち続ける夢をみた
辞書をめくると
不幸な夢は
すべて幸福に繋がっていた
けれど
これが不幸なのか幸福なのか
判断がつかない



+まなざし

風船が
天国を夢見て昇っていく
やがて点になって
それから先のことは
何も知らないままだった



+旅をする図形

コンクリートの丸い模様や
横断歩道の白くない部分が
まだ踏んではいけなかった頃
しあわせは
何度でもやり直しが出来た



+街が埋まる

恋をするという事が
街をその人で埋め尽くす事だとは
知らなかった
つらい時には名前を呼ぶのが
癖になっていた
ここにも
あそこにも居た
今ではもう居ない



+さみしい道

額からこぼれ落ちてくる
角を拾い集めて
ひとつずつ
きれいに並べていく
この道の先に
答えがあるのだろうか



+三年後

ひとつのメールを
眠ってしまうまで瞼に乗せて
明るい朝をまっている
朝なんて来なければいいのに
あの時の言葉の意味が
今やっとわかる



+ビオトープ

空に願いを植えたら
問題ばかりが生えてきた
そしてまばたきもやめて
生きてる意味を育ててる



+りんね

人は
人生の中で
ほんの僅かな時間だけ
ほんとうの詩人になれました
またあの場所へ行こうね
さまざまな理由をよけて
穏やかな表情をして
人々は
次の仕度を始めました
 
 
 


自由詩 空は人のかたちに似ていく Copyright 石田 圭太 2009-07-07 13:57:39
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