望遠ノ瞳
服部 剛
この世の者ならぬ
あの(瞳)が
私の心の暗闇を
覗き込む時
空に薄っすら浮かぶ
あの(瞳)を
私もじっと
視るだろう
目の前に立つ
あなたの内側から
あの(瞳)が
望遠レンズの姿になって
私の窓を、覗いている
私の内側から
あの(瞳)が
望遠レンズの姿になって
あなたの窓を、覗いている
そうして互いをみつめる時に
遥かな国から呼びかける
光の中から囁く
あの声に
私達の鼓膜の奥は
微かに震える
あなたは私の鏡であり
私はあなたの鏡である
*
世界のあらゆる場所を
瞬時に視る
あの(瞳)
という名のレンズに映された
アダムとイヴ
( 今、彼等の手から離れた赤い実が、
地に転がり、落ちる・・・ )
望遠レンズの円の中に
向き合う二人は
いつまでも
互いにじっと瞳を合わせ
不思議な空に、立っている