望遠ノ瞳 
服部 剛

 この世の者ならぬ 
 あの(瞳)が 
 私の心の暗闇を 
 覗き込む時 

 空に薄っすら浮かぶ 
 あの(瞳)を 
 私もじっと 
 視るだろう 

 目の前に立つ 
 あなたの内側から 
 あの(瞳)が 
 望遠レンズの姿になって
 私の窓を、覗いている  

 私の内側から 
 あの(瞳)が 
 望遠レンズの姿になって 
 あなたの窓を、覗いている 

 そうして互いをみつめる時に 
 遥かな国から呼びかける 
 光の中から囁く
 あの声に 
 私達の鼓膜の奥は 
 微かに震える 


あなたは私の鏡であり 
私はあなたの鏡である
 
    * 


 世界のあらゆる場所を 
 瞬時に視る 
 あの(瞳) 
 という名のレンズに映された 
 アダムとイヴ 


 ( 今、彼等の手から離れた赤い実が、
   地に転がり、落ちる・・・    )


 望遠レンズの円の中に 
 向き合う二人は 
 いつまでも 
 互いにじっと瞳を合わせ 
 不思議な空に、立っている 





自由詩 望遠ノ瞳  Copyright 服部 剛 2009-07-05 19:47:33
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