ザ・ブーンンンンンあい
砂木

あやめ祭りが開催されるという
そんなにあらたまって見に行かなくても
家にある花で充分だというと
それは外の世界を知らないからだと夫が言う

紅葉も 山に暮らして二十年近くになり
台所の窓から見える季節の移り変わりに
感じ入り 恐れ入っているのに
それではだめだ 何も知らないままだというのだ

暮らしに慣れたようでも故郷ではない嫁の私
いつも ここは 外
帰る実家も弟が家族と継いでいて もうない
遊びには行くけど かえらない
決意して 出た故郷なのだ

外を知らない と言う夫
私の外は あなた

休みが会う日に連れて行くと言っていた
あやめ祭りは 結局 行けなくなり
せっかくだし 久しぶりにスカートでもはいてと
思い始めていたが まあいいよ

私はどこも知らない
それがどうしてだと思っているの
知らないままで ここでいいと言っているのに





自由詩 ザ・ブーンンンンンあい Copyright 砂木 2009-07-04 21:52:58
notebook Home 戻る  過去 未来