指とまなざし
木立 悟







夜が落ち
夜に鳴る
風の無い 夜の明るさ


羽 葉 紙 綿
重なりと水
空へほどけ 沈む光


緑降る日
誰もいない日
青の足跡
水へつづく坂


煙のような岩山が
歩みのそばに笑っている
湖の辺
春を見ない鳥の声


冬のはじまりのなかにある
火のはじまりへゆくのです
ひとつまみ つんざき
ひとつまみ つんざき


あやふやな手くだ
小さなひとの気配のかたち
からめとり からめとり
あたたかをひとつ編んでゆく


まなざしを知っています
他ならぬもの
底から来るもの
ひとつきりのもの


滴の音がすぎ
黒い線が立ちつくす
のばした指と 葉の間の無が
空になり 空のきれはしになってゆく


終わりはじめる朝の片すみ
うたう気もなく置かれたうた
喧騒は干き
静かな静かな喧騒に満ちる


緑を呑むたびふるえがあり
花がひとつどこからか来る
まなざしの上に下に咲き
行方の行方を指し示す


葉が消え 指が消え
でもそこにあるのです
ただ葉と指を
描きつづけているのです






















自由詩 指とまなざし Copyright 木立 悟 2009-07-04 09:43:33
notebook Home 戻る