ふるる

ある日突然
子どもたちは先祖がえりをした
背は小さく
言葉を失い
歌うこと
踊ることだけになり

海へ列を作りゆこう
歌い
踊りながらゆこう
砂浜で広がり
ねころぶ子どもたちそれはまるで
風の手で
愛しく散りしかれた花々

潮の匂いと
波の音だけがしている
波が子どもたちをくすぐると
笑い声が真珠のように転がるので
鳥たちはきょろきょろする

やがて子どもたちは
小さな鱗で包まれ
楽しい尾ひれ
水をかけあい遊ぶ
昼寝の時間まで

笑い声は遠ざかり近づくのに
あそこは
もう
光がいっぱいで
何も見えないよ



ある時、浜辺を歩いていると子供が落としたらしい小さなハンカチが、泡立つ波にそっと持ち上げられ、白い砂浜に置かれ、を繰り返していた。それはしばらくの間あて名のない手紙のように海と浜とを行ったり来たりしていたが、やがて青いガラスを散りばめた波の彼方へと連れられて、見えなくなった。



自由詩Copyright ふるる 2009-07-02 23:41:39
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