夢を見る人
あ。

夢に溺れた人がいた

夢に溺れた人は口を閉じなかった
本棚にはおとぎ話と空想の国の絵本しかなく
晴れた日には空を眺め花と歌い
雨の日は水滴に合わせて踊っていた

夢を捨てた人がいた

夢を捨てた人は口を開かなかった
瞳はいつも一点しか見つめておらず
風の日には帽子を押さえて顔をそむけ
雪が降れば屋根を直して面倒を憂いた

ひょんなことで二人は出会った
当然、分かり合うことなど出来なかった
はずだった

夢に溺れた人は時々黙るようになった
夢を捨てた人は少しずつ口を開き始めた

様々な季節や天気が間を通り過ぎる

気付いたら二人の視界は混じりあっていた
浮かれすぎず儚みにとらわれすぎず
ニュートラルな目線を手に入れていた

晴れたり雨が降ったり
風が吹いたり雪が降ったりした
何度も何度も繰り返された

二人の血を引いたものがたくさんいる
この星の全てが、二人の子孫
溺れず、捨ててもいない
夢を見る人が、そこにいた


自由詩 夢を見る人 Copyright あ。 2009-06-22 19:53:19
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