影の記憶
暗闇れもん

椅子に残された影を抱いて
私は目をつむる
もうにおいもなくて

人間くさい欲望に弱いところも感じられない

こうやって私の中でのあなたの存在が消えていくのを感じる

思い出が消えていくのを嘆いているのかしら

もう夢だったんだって思う
影を抱いて
私は自身が現実であることさえ疑い始める

この現実は私の意識がそう見せることでのみ存在している

疑いはもたないのかしら

夜が満ちてきた

この瞬間の自分は脳が見せた幻かもしれないわ

だからこの部屋で私は影を抱いて眠る

何度夜がやってきて
無数の獏たちがお腹をすかしてやってきても

この夢は苦くてしょっぱいのよと笑って
誰にも渡したりしない




自由詩 影の記憶 Copyright 暗闇れもん 2009-06-17 23:19:12
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