傘
虹村 凌
「僕が愛おしいと思う女は他人が見たら欲情もしないような女だったんだ」
と雨の中で呟き煙草を放り投げる
傘なんて大嫌いだ
全身を複雑骨折してしまえばいい傘なんて
不貞腐れて雨に濡れて歩き出す
一人誰も居ない道を
この道しか知らない気がする
何処まで続いてるかわかんねぇけど
雨に打たれて家まで帰る
傘なんて大嫌いだ
何にも無いこの道を歩く
どしゃぶりの雨の中を
敗れた夢の残骸を引き摺って
歩く歩く
誰もが眠る街の真ん中を
一人で
歩いてる
影だけが傍を離れずに歩いている
どしゃぶりの痛みの中で
心臓の鼓動だけが聞こえる
誰か一緒にいて欲しいと思うけど
結局いつも一人で
歩く
強風を受けた傘が裏返り
知らない奴が飛ばされていく
傘なんて大嫌いだ
自分が生きていることを確認してから
煙草に火をつけて歩く
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創書日和、過去。