Cafeの机
服部 剛
このCafeの机の木目は
人の指紋に似ている
この机は今も時折
森にいた頃の懐かしい記憶を
思い出している
*
自らの枝に留まって
朝の唄を森に響かせる
小鳥等の囀り
周囲に立つ木々の間を
吹き抜ける風に揺れる
葉擦れのざわめき
そして、静まり返った深夜
森の頭上の夜空に瞬き
何かを囁き合っていた
無数の星々
ある日、大きい鋸を持つ男が
歩み寄り
身を削られる悲鳴に倒れ
視界の反転した世界の大地に
横たわったあの日・・・
*
今、机の姿となり
Cafeに訪れる人々が
頬杖をついては漏らす
休符にも似た溜息や
向き合う二人の間に
弾む幸福な会話の序曲を
黙って聴いている日々
いつか、何処かに棄てられて
投げ込まれた
炎の内に揺らめく
黒い影となる日まで
これからも
Cafeの机は
この店を訪れる日常の旅人達が
こころの荷物を降ろすよう
無言の姿で待っている