Cafeの机 
服部 剛

このCafeの机の木目は 
人の指紋に似ている 

この机は今も時折 
森にいた頃の懐かしい記憶を 
思い出している 

  * 

自らの枝に留まって 
朝の唄を森に響かせる 
小鳥等のさえずり 

周囲に立つ木々の間を 
吹き抜ける風に揺れる 
葉擦れのざわめき 

そして、静まり返った深夜 
森の頭上の夜空に瞬き 
何かを囁き合っていた 
無数の星々 

ある日、大きいのこぎりを持つ男が 
歩み寄り 
身を削られる悲鳴に倒れ 
視界の反転した世界の大地に 
横たわったあの日・・・ 

  * 

今、机の姿となり 
Cafeに訪れる人々が 
頬杖をついては漏らす 
休符にも似た溜息や 

向き合う二人の間に 
弾む幸福な会話の序曲を 
黙って聴いている日々 

いつか、何処かに棄てられて 
投げ込まれた 
炎の内に揺らめく 
黒い影となる日まで 

これからも 
Cafeの机は 
この店を訪れる日常の旅人達が 
こころの荷物を降ろすよう 
無言の姿で待っている 





自由詩 Cafeの机  Copyright 服部 剛 2009-06-17 19:39:14
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