思い出しメロディー
なかがわひろか

そういやこの曲を聴いていたときに
君はすでに死んでたんだね
なんだか不思議だね
僕がこんなに素敵な音楽を聴いているときに
君はとっくにこの世にいないなんて

あのとき僕はどんな思いでこの曲を聴いていたろう
ただ漠然と生きていることが苦しいと思うことくらいで
君が死んでから過ぎていく初めての時間の中で
僕は死ぬことでも考えながら口ずさんでいたのかなあ

君が死んでから
いつまでが君が死んだ時間なんだろうって
僕は今でも考えるんだ
君はあれから三年経っても
相変わらず死んでいるから
君は何も僕に語ることなく
今でもずっと死に続けているからさ
ああきっと
今日も明日も
来年の今頃も
君は死んでいるんだなあって思うんだ

だからこのメロディーを聴いたらさ
僕はいつも君の死の始まりを感じるんだ
だから僕はときどきこのメロディーを聴かなきゃならない
ときどき忘れそうになるからさ
君が今日も死んでいることを

(「思い出しメロディー」)


自由詩 思い出しメロディー Copyright なかがわひろか 2009-06-16 18:33:47
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