醤油 たもつさん
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われわれは忘れる生きもので、忘れていくからこそ、生きていけるという面があ
る。けれど、どうしても染みついて取れないよごれのように、良きにつけ悪しきに
つけ忘れることのできない瞬間や物事があるのだとおもう。
たもつさんの2003年に投稿されたこの作品ではそういった人間のありふれた性質
のおかしさ、悲しみ、が鮮烈に描写されていて、すごくよかった。醤油を飲みすぎ
ると死ぬらしい。というのは、わたしも小さいときに聞いて、興奮したものですが
まず、そこに着目できるところがすばらしい。そういった一見なんでもないような
でもへんてこりんだったり、魅力的なモチーフをみつけることは、作品をつくる上
でとても大切なのだとおもう。
また、コメント欄に「醤油以外の調味料だと感じないかも。醤油だからこそ。」
と記されていますがたしかに!とうなづいてしまった。醤油のたたずまいというも
のがあって、あの塩辛い、けど舐めまわしたくなるような濃い黒の液体。「醤油の
海」なんて表現からも日ごろから醤油を偏執的に観察しないとでてこないものを感
じて、たもつ氏の食卓を想像してしまう。きっと好きなんだ、醤油が。
他にも「佐藤君」などにみられるリアリティはすごいなと感じた。顔は知ってい
るし、話したこともある、深くはしらないけれど、でもどことなく苦手。そんな相
手を意識してしまう感じ。じぶんにも覚えがあって興味深い。トイレとかで偶然会
ったりすると「おう」とか挨拶して、すぐ出ていくような。そんな空気感が封じ込
められていてよかった。