夏を想う
うめバア

また
草の匂いのする、夏が来る

ホームから駆け下りて
5時17分の各駅停車に間に合うように
大人たちが向かう方向とは
ずっと、ずっと
逆に走ろうと決めて

あの人からは
降りだした雨と同じ
マイルドセブンの香りがした

重だるい蒸し暑さ
直後の、冷徹な風の声
激しい雨が連れてくる
直情型の季節

ぬれるのが嫌だから
電話ボックスに逃げ込む
ポケットの10円玉を突っ込んで
覚えてる友だちの家に
ダイヤルする投げやり

あの瞬間
ガキの時代が
最終レーンを回ろうとしてた

自分は
全速力で
駆け抜ける予定だった

あれからまた
草の匂いのする
夏が来る


自由詩 夏を想う Copyright うめバア 2009-06-15 18:51:45
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