天道虫
新崎

 闇夜に赤い何かが舞う

 凝らしてみると それは天道虫てんとうむし

 赤に斑点の喪失を携え おまえは飛ぶ

 何を求めておまえは飛ぶのか

 失われた赤を求めて おまえは飛ぶのか
 
 他に赤もなく おまえは独り飛ぶ

 ふらふらとぶれながら おまえは飛ぶ

 寂しくはないのか こんな闇夜に独り

 おまえはこんな夜に飛ぶべきではない

 おまえは己の名を忘れてはいけない

 御天道様おてんとさまの御加護がある時にのみ

 おまえの喪失は映ゆる漆黒となるのだから

 赤をいっそう引き立てる黒になるのだから

 故に御天道様の御隠居は おまえの遊泳にとって
  
 厳かな桎梏しっこくとなるべきなのだ

 闇夜に飛ぶおまえは ひどく悲しい

 おまえは己の名を忘れてはいけない


自由詩 天道虫 Copyright 新崎 2009-06-14 01:14:46
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