防衛線
佐藤真夏

日常の底辺を二つに割って
その間を流れる河で泳ぐこと
海に出ること 叫ぶこと
朝も夜もない北へ向かって傷む
幾つもの舟は
弾性限界を突破して
大破した

塵となり
風に巻かれた星屑
溶け出して
海に食べられた雪屑
私たちの抱えきれなかった
子どもたちは
母の胎内に還って息を止める
愛していた よ/ね


一八〇度未満の視界は
目蓋に守られて息をする
微弱い生活の集合体
日常を抱く 日常を抱く
部屋の明かりを落とそうか 目を閉じるよう 
二階の角部屋は朝日に焼かれ
まな板の上で震えるふたつの枕


自由詩 防衛線 Copyright 佐藤真夏 2009-06-09 11:57:30
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