みどりのころの…
ゆびのおと

たけよ
わかたけよ

雨上がりに匂い立つ
若草の薫りよ

今日一日の棘を洗いおとし
網膜の奥底にしみつく
灰の濁りに
若草みどりの輝きで
健やかさの幻影を与えたまえ
水辺の匂い
マキ貝のつぶやき
いるかの信号
遠く北の海で流氷に押し流されたつがいのクジラが
鳴き交わす音
声。声。声。

意匠に満ちた。
悪意に満ちた。
嘆きに満ちた。
…喜びに満ちた。

大気に満ちる信号よ

わかたけよ。
青々とのびやかに葉を茂らせこの季節ならではの
湿り気と哀調で
たおやかに幻影を誘う。
わかたけ、の、葉陰よ。

私はすでにその世界の
住人であるものを。




自由詩 みどりのころの… Copyright ゆびのおと 2009-06-06 18:18:57
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