にんげんのおとことおんなが
ふくだわらまんじゅうろう

     にんげんのおとことおんなが



にんげんのおとことおんなが
セックスを愉しむ
それはあるとき
必要以上に意味を持たされた儀式であったり
あいさつ程度の交わりであったり
激しくも激しい激情の挙げ句たどり着いたふたりの出発点であったり
酔った勢いの事故であったり
断崖絶壁に追い詰められたふたりの結論の前奏曲であったり
コマーシャル社会の電波に煽動された子供たちを捕らえる罠であったり
この世のすべてを手に入れた特権階級の暇つぶし的病気であったり
この世のすべてを手に入れたと勘違いしている踊る非特権階級の悪あがきであったり
若かりしときを懐かしむ老夫婦のささやかな会話であったり
「もう明日がない!」と焦る君の断末魔の勇気であったり
「でもこうするしかないの!」と信じる彼女の怒涛の快進撃であったり
結論を先延ばしにするための曖昧な句点であったり
それでもこんな宇宙に未練を残す遺伝子の螺旋階段を昇りつづける本能のちからのちからのそこぢからであったり
まるでブランドものでも手に入れるように暢気で陽気で無邪気で有罪な子づくりブームの義務的行為であったり
明日、あの戦地に旅立つ君に残された国家エゴ主義に対するささやかでも力強く且つ哀しい反抗の花吹雪であったり
宇宙と宇宙を繋げる唯一にして無限大の、それでいて何よりも日常的すぎる創造の妙法であったり
救済の
そして絶望の
入り口であり、また
出口であったり
にんげんのおとことおんながこすりあう
こすりあうその現実のかなたに我々は
我々は一喜一憂し
あるいは芸術の端くれだとか
陶酔の代用品だとか
勢いあまって神様の愛だとか
美しさと醜さを併せ持った、いわばこの宇宙の象徴の最たるひだひだだとかを
見て見ぬ振りして
あるいはまったく気づかぬうちに
まるで光の矢のようにこの一生を駆け抜けて
駆け抜けて駆け抜けて
ゆくのだよ
たとえいちにちじゅうおうちの中にいて
もんもんとしたりしていなかったりしている君も
光のように
駆け抜けて駆け抜けて
いるのだよ
光の矢のように駆け抜けて
駆け抜けて駆け抜けて駆け抜けて
そしてそれら性具のとんがりとぬるぬるを利用して
ひとつの銀河を創造するのだよ
いいとか
いやだとか
面倒くさいこと言ってんじゃないよ
ほんとを言うと
それがしたくて生まれてきたんだよ
そうだよ
選んで
生まれてきたんだよ
ひとのせいになんかできないよ
だから
にんげんのおとことおんなが
セックスを愉しむときには
善かれ悪しかれ
宇宙と宇宙の出会いだよ
爆発だよ
爆発なんだよ
四の五の言うなよ
爆発なんだよ
納得いかないんだったら、いいよ、勝手にしなよ
勝手にして、しみったれた、湿っぽい
湿っぽい人生を、そのまま、ゆけよ
湿気た爆竹の
不発弾みたいに
湿っぽい人生を、そのまま、ゆけよ
それも真実だよ
それだって宇宙だよ
そうだよ湿気たドーナツみたいな人生だって
宇宙だよ
だけど
にんげんのおとことおんなが
セックスを愉しむときには爆発しようよ
病気だとか
死だとか
社会的地位だとか未来だとか
そんなもの乗り越えちゃうくらいの痴情だよ
ばかで
哀しくて
気持ちいいんだよ
エゴまる出しの自由資本主義市場経済の原理だとか原則だとか
そんなもん吹っ飛ぶんだよ
そして俺たちも
吹っ飛ぶよ
俺も
おまえも
彼女も
彼も
結婚制度とか
家柄とか
国境とか
ひんぷのさとか
乗り越えて
飛び越えて
蹴飛ばして
ぶっとばして
にんげんのおとことおんなが
セックスを愉しむときには
爆発するんだよ
爆発して
いるんだよ



自由詩 にんげんのおとことおんなが Copyright ふくだわらまんじゅうろう 2009-06-01 21:50:14
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