六月の水球
佐野権太
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という
撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
幼く笑う
小さな額をみつめる
逃げ切れないかもしれない
君の世代
そうしている間にも
星は
少しずつ動いている
*
プロペラと
流体力学と
少しの風力
鳥に憧れるならば
そのくらいでよかった
月の海には
やさしい動物が
住んでいればよかった
*
毎朝
ふたご座を占うことを忘れない
君の
誰にも聞けない秘密の質問に
お父さんは、もう
うまく答えられそうにない
繰り上がりの計算は
教えられても
かなしみと
折り合いをつけるやり方は
自分で見つけるしかないのだ
*
手渡してゆく、季節
六月の
細い雨がささる
それでも
君の傘の先は
まるくなっているから
少し
安心するんだ
ひだりの瞳に
緑を潤ませて
名を呼べば、きっと
両手を振り返す、君を
みぎの瞳で願っている
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家族の肖像