にわとり
山中 烏流




もしかすると
隣人はにわとりなのかもしれない


あけぼのに向かって響く声は
良く知られる
「こけこっこ」

「くっくどぅーどぅるどぅー」
では、なく

もっとか細い

(まるで、すすり泣くような


、なのだけれど



     *



私の一日は
日没から始まる

もう長いこと陽を浴びていないせいか
真っ白に近づいた肌は
蛍光灯のように光って
私は
サングラスを手放せない



     *



にわとりがなくのは
太陽を恐れる故、らしい
とある国では
長い間そうやって
神話として、伝えられていた

しかし

知り合いの話によれば
まるでそんなことはなく
月が煌々とする時であれど
にわとりは
高らかになくものなのだ、という


だとすれば

隣人は
何を恐れて

ないているのだろう、か



     *



隣人のなきごえを合図に
私は
カーテンを開き
そして
その、光にくるまれながら
眠りに落ちる

それが、私の一日の
終わりだ



     *



隣人が
私の部屋を叩いて
なぜ、あなたはなかないのですか、と
尋ねてきた

あなたには
私がにわとりに見えるのですか、と
尋ね返したら

それ以外の何なのですか、と
隣人は
言ってのけた




     *



隣人の一日は
日の出から始まる

光を恐れる故に
真っ白に近づいた肌は
蛍光灯のように光って
私と同じように
隣人も
サングラスを手放せない



     *



誰も間違っていないなら

きっと
私はにわとりなのだ


誰も間違っていないから

本当は
最初から、私も



     *





なきごえが、する














自由詩 にわとり Copyright 山中 烏流 2009-05-31 01:33:25
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