くちびる
アンテ


どうしても
ヒロコちゃんのくちびるが
ほしかったの

ピンクいろのふくを
たくさんてにいれたわ
ピンクいろのいえをたてたわ
おとうさんもおかあさんも
こいぬのリリも
ピンクいろにとりかえたわ
ともだちも
ピンクいろのこばかりえらんだわ
モモちゃんほんとピンクいろがにわうわねって
みんなほめてくれたわ
ほんとはしってたくせに
モモをうちょうてんにさせて
かげでわらって

ばかみたい

ヒロコちゃんがおなじクラスにいたことすら
ずっとしらなかったの
モモちゃんがだいすきよおともだちになってね
はずかしそうなひょうじょうの
まんなかで
なんてきれいな
ピンクいろのくちびるが
こまったようすで
くちびるにゆびをあてがうときも
ちょっぴりすねるときも
モモのなまえをよぶときも

ねてもさめても
めにやきついてきえないの

あのとき
ほうかごにりかしつによびだしたときも
たすけておねがいだからゆるして
ないてすがるヒロコちゃんの
くちびるは
うっとりするようなピンクいろだったわ
したくちびる
がさいしょ
それから
うわくちびる
しんちょうにきりとって
モモのみにくいくちびるととりかえたわ
かがみのなかには
ゆめのような
うつくしいモモがうつっていたわ

しあわせな
みっかかんだった

やすんでいたヒロコちゃんが
がっこうにでてきたの
しんぱいをかけてごめんなさい
みんなのまえでぺこりとあたまをさげて
にっこりとわらったかおには
もとどおり
ちゃんとくちびるがあったの
いいえ
わたしがうばったくちびるなんかよりも
ずっとずっときれいな
ピンクいろだったの
ヒロコちゃんは
モモのななめまえのせきにすわって
ふりかえっていったの

これからもなかよくしてね

どうしても
ヒロコちゃんのくちびるが
ほしかったの
だから
ヒロコちゃんのくびからうえを
きりとって
うらにわにうえたの
まいにち
あたらしいくちびるがてにはいるように
みずをやって
ヒロコちゃんをそだてたの
そうするしかなかったの



自由詩 くちびる Copyright アンテ 2003-09-26 01:44:59
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