走る 金の獅子
瀬戸内海

銀河の汽笛を口ずさみ
かっこうが飛び去った空を
虫を喉で暴れさせながら
小さな猫のもとへ
走る 金の獅子

はにかみ並ぶ信号機の色を伺いながら
小さな杉の上をびゅんびゅん駈け
酒に溺れるあまがえるを横眼に
サウザンクロウスをひとっ跳び
幻燈会の上を又三郎に歌われながら
差し出された団子を頬張り
走る 金の獅子

噴き出す火山のマグマを踏んで
大きく足を腫らせても
走る 金の獅子
もっと足を腫らせて泣いている猫のもとへと
急げ 金の獅子

足を引き摺りながら歩く 猫
ちょこんと座った椅子の上
帳簿のない机では仕事もできずにただ 涙
じっと見つめる机の上
まるで空気のような 猫

すすで身体中を真っ黒にした猫の目は
涙 涙で腫れ上がり
きらきら輝く雫の下はしっとりと 白い色
誰も見たことのない 白い色
嫌われものの猫のもとへと

そして 飛び降りた 金の獅子
黒い雲にも負けず 槍のような雨にも負けず
飛び降りたイーハトーブ
叩くのは 事務所の扉
神鳴とともに吼える 金の獅子
「ええい、やめてしまえ!」

こうして事務所は廃止になりました。
ぼくは半分獅子に同感です。




自由詩 走る 金の獅子 Copyright 瀬戸内海 2009-05-24 20:41:15
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