ラズベリー・パウダー
くれいじー・こすぎ

あの日を境に、別々の道を歩んだ二人
このまま手をつないで
ずっと温もりがあるはずの未来
一瞬にして消えた
今日は一人で晩ごはん


ラーメンの香りにつられた
「金が無くてごめん」
いつもここの味噌を食べたな〜
ねぎとコショウがたっぷり
主人にはお世話になったな


一人の帰り道
マフラーで口を覆う
冬も本番
寒いから家にずっといたい
それに
見なくていい物ばかり
見たくない事ばかり


懐かしさがやって来た
甘く、苦く、気持ちよく、切なく
何も知らず
何も分からず
ただただ笑って泣いた日々
夏の水着と花火
秋の紅葉
冬の景色
春の別れ
思いが舞い降りてきた


愚痴をこぼすようになった
自分より少しでも良い物に
自分より少しでも明るい笑顔に
コーヒーといる部屋の中
砂糖とカフェインが問い掛けてくる
「そろそろ、楽になれば?」
実は今が一番良かったりする
この状態が心地良いのだろう
何かを失くしたとしても
誰かを不快にしたとしても


ロマンティックな思いをしていた
ロマンティックな目線で見ていた
ロマンティックな肌で感じていた
ロマンティックがまだ生きていた


いつものように
いつも通りに生きているよ
もしも続きがあるならば
その時は一緒に
いつかは忘れるかもしれない
あの日芽生えた
はかなく濃密な気持ちが
消え去らないまでは
かすかに見える
淡い赤の粉雪が
降り止まないうちに
もう一度
もう一度だけ、帰りたい
それで全てが終わったらいい
引きずって生きれるならそれでいい


自由詩 ラズベリー・パウダー Copyright くれいじー・こすぎ 2004-08-30 22:39:43
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