Real Voice In White Space
服部 剛

私の名前は「架空」です
私が現実に生きる本名と
人々とふれあういくつもの場面は幻です
パソコン画面の内側に
果てなく広がるさわれない空間で
足をつける地も見つけられずに
呼んでいます

「ホントノ ワタシガ ココニイマス ・・・」

見知らぬ アナタ が現れて
電子文字の会話をすると
自分でも気付かぬうちに
アナタ の美貌を描いていたり
さわれないココロのつながりが垣間見えたり

日中の雑踏で
スーツを身に装い
交差点の渦の只中に立つ
感情の無い足音に包まれ
ふいに 私は どこまでも 「独り」

ビル群を仰ぐ
頼りなげな想いの片隅で
ささやかな反抗が
瞳を光らせる

一日の仕事を終え
バス停に立つ時刻表に凭れる 
交差点の信号は青に変わり
向こうからゆっくりと来るバスは
灰色のコートにくるまった僕の身を乗せ
細い道の闇へ吸い込まれてゆく

家に帰ると
今夜もパソコン画面の
白い空間を目の前に広げ

「向こう側」に呼吸する誰かを探し
キーボードを打つ
五本の指だけがしゃきしゃきと踊り続け
血の通うぬくみを
電子文字に吹き込もうと試みる

「モウ一人 ノ ボク」が
白い画面の内側に歩き出し
寂しげな顔を浮かべた石が
落っこちていやしないかと
あたりを見回す

1人 ・・・ 2人 ・・・ 3人 ・・・

白い空間に
あらゆる表情を浮かべた無数の石ころが現れ
小さいつぶやきをはき出しながら
終わりの無い浮遊を始める 





自由詩 Real Voice In White Space Copyright 服部 剛 2004-08-30 20:27:14
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