サンクチュアリ
水穏(みおん)
ふかいみどりのやまのおく
しろい蝶がとんでいました。
あまりにもしろくて、
やまのみどりに映えていました。
わたしは誘われるように
蝶を追いかけました。
わたしは誰かに置いていかれてしまうような
わたしは誰かを置いていってしまうような
このふかいみどりのやまのいただきへ
誰に置いていかれるのか思い出せないまま
誰を置いていくのか思い出せないまま
しろい蝶を追い続けました。
蝶よ蝶よ
どこまでもどこまでもわたしを導いて、
蝶よ蝶よ
どうかやまのみどりに消えてしまわないで。
二〇〇五年八月二十八日 三人合同誌『Mement-Mori』より